01 現代の心の課題と、プロジェクトの出発点
近年、日本でも「PTSD」「トラウマ」「フラッシュバック」といった言葉が一般的に使われるようになり、心の不調や揺らぎについて語る場面が少しずつ増えてきました。
けれど、実際に日常の中で苦しむ人が、適切なケアを受けられるとは限りません。
カウンセリングは有効でも、
「予約が取れない」「つらい時に動けない」ことは多い。
外に出るのすら難しい人もいます。
精神科や心療内科も大切な場所ですが、どうしても通えない人がいるのも事実です。
コロナ禍を経て、対面以外のサービスも少しずつ整ってきました。
でも、PTSDを抱えて生きる人にとって「自分で自分を守る知識」は、まだ十分には届いていません。
ふと、思いました。
たとえば、電車の中でグラウンディングができたら。
悪夢に苦しんだ朝、自分のペースで“戻る”ことができたら。
毎日ちょっとずつでも、自分に合った癒しのトレーニングができたら。
誰でも。気軽に。自分で。
そういう「自分だけのグラウンディングプラン」を選べるようにできないだろうか。
そんな思いから、「We write to heal.」は始まりました。
このプロジェクトは、“今”に戻る感覚を支える音声台本を制作・配信する取り組みです。
声の力で、ことばの構造で、
日常のなかに“戻れる場所”を増やしていく。
私たちは、
癒されるために、
書く。
“We write to heal.”
この言葉に、すべてを込めて。
02 癒し台本とは? ー 日常に寄り添う「声」のセルフケア
スマートフォンが普及する以前、私たちはウォークマンという画期的な機器を手に入れました。
音楽を持ち歩くという体験は、人混みの中でも「ひとりの世界」に戻れる、静かな革命でした。
今ではイヤホンをしている人の姿は、すっかり日常の一部になっています。
この“日常に溶け込んだ音の文化”を、PTSDやトラウマを抱える人の助けにできないだろうか?
そう考えて生まれたのが、「癒し台本」です。
スマホとイヤホンがあれば、誰でも手軽に“声のセルフケア”を始めることができます。
電車の中でパニックになりそうな時
買い物に行くのが怖いと感じる時
ひとりで不安になってしまう夜
そんな瞬間に、
聞き慣れた声と言葉の構造が「今に戻る」感覚を支えてくれる。
それが、癒し台本の役割です。
このプロジェクトでは、構造化されたスクリプト(台本)をもとに、
安心できる声を持つ方に読み上げていただき、音声として公開していきます。
その読み手は、声優である必要はありません。
その人にとって安心できる「音」や「声」こそが正解だからです。
もちろん最初は、イメージが湧かない方も多いかもしれません。
そのために、多様な語り口・構成・声種のサンプル音声も用意しています。
最終的な目標は、
PTSDに悩む当事者が、自分自身で“癒される台本”をカスタマイズできること。
03 癒し台本の構成と特性
癒し台本は、「声によって“今に戻る感覚”を支える」ことを目的とした構造的なスクリプトです。
主な特徴は以下の通りです。
■ 構成上のポイント
使用者にトリガーを与えない設計
環境音・効果音などは基本的に使用しません。音による刺激が逆効果となる場合があるためです。
ただし、使用者が希望する場合には、カスタムアレンジにより追加可能です。
語り口の基本方針
・落ち着いた口調
・多少の好意がにじむ距離感
・高圧的/早口/冷たい/過度に親密/極端に特徴的な語りは避ける
この方針はあくまでサンプル音声における初期設定であり、
使用者自身が快適と感じるスタイルであればこの限りではありません。
性別・年齢・話者の条件に制限は設けない
声優や特定の演者に限定せず、AI音声であっても一定の効果を期待できます。
重要なのは、「使用者自身が安心できる声」であることです。
■ スクリプトのバリエーション
本プロジェクトでは、用途やシーンに応じた複数の台本を用意しています。
使用者は以下のようなスタイルを自由に選び、カスタム可能です。
- やさしく話しかけるタイプ
- 静かに寄り添うような独白型
- 無音に近い間を活かしたトーン
- 論理的で整った安心感を与えるもの
台本は利用者自身が編集しても構いません。
自分にとって最も効果的な「語り口」や「テンポ」を見つけていくプロセスそのものが、
セルフケアの一部でもあります。
■ 音声化について
自力での収録が難しい場合には、プロジェクト側がサポートを行います。
依頼された台本は、希望する語り口や声の傾向を伺った上で収録されます。
音声は無償提供を前提としており、営利利用は想定していません。
癒し台本は、「誰かに読んでもらう」ものであり、
「自分自身のために、自分で選ぶ」ものです。
選択肢があること──それ自体が、癒しの第一歩です。
演者・協力者の方へ
このプロジェクトにおいて、PTSDやトラウマに関連する内容を取り扱うことはとてもデリケートです。
しかし、その対応は専門職であってもトライアンドエラーを前提としています。
読み手(演者)が内容に対して「うまくできなかった」「合わなかった」と感じても問題はありません。聞いた方の反応が想定と異なっても、演者に責任が生じることは一切ありません
このプロジェクトは、“完璧”を求める場ではなく、共に探していく場です。
フィードバックは歓迎しており、もしトラブルや困りごとが起こった場合は、
一人で抱え込まず、主宰者までご連絡ください。
声の届け方に「正解」はありません。
“声を通じて誰かに届こうとする気持ち”があれば、それだけで十分です。